お知らせ
2026年06月09日 施設情報
沖縄美ら海水族館では飼育魚類の寄生虫感染症に対する新たな治療法を開発したことをお知らせします。
本技術は、当館が2017年より研究を進めてきた「サメの人工子宮」の技術を一部応用することで開発されたものです。
単生類は魚類の体表や鰓に寄生する数ミリサイズの寄生虫であり、大量に寄生すると宿主の健康に大きな影響を及ぼします。水族館では、単生類※に寄生された魚を短時間淡水に浸ける方法(淡水浴)による駆虫が広く行われます。しかし、この手法は淡水環境に極めて弱い魚種、例えば一部の無顎類(むがくるい/ヌタウナギの仲間)や板鰓類(ばんさいるい/サメ・エイの仲間)には使うことができません。多様な魚類を飼育する水族館では、淡水浴を用いることができない魚にも適用可能な治療法の開発が求められていました。
※ 単生類(たんせいるい)…… 主に魚類の体表や鰓(えら)に寄生する扁形動物(へんけいどうぶつ)
当館は、「サメの人工子宮」開発の一貫として、2021年にサメの胎仔を母体外で育成するための溶液(人工羊水)を開発しました。この溶液は、淡水・海水・尿素を一定の割合で混合したもので、サメの血漿に似た化学的特性を持ちます。その後の研究により、この組成を応用した溶液がサメの胎仔の育成だけでなく、寄生性単生類の駆除にも有効である可能性が示唆されました。
そこで、人工羊水の淡水・海水・尿素の混合比を変えて比較検討したところ、宿主である無顎類や板鰓類には安全で、かつ効率的に単生類を駆除できる溶液(尿素水)の開発に成功しました。
海水・淡水・尿素を混合した溶液(尿素水)に、寄生虫症に感染した魚を短時間(5分程度)浸けることにより、体表に寄生した単生類を駆除します。
なお、本技術は、淡水浴が適用できない無顎類や板鰓類に対する安全な寄生虫駆除方法として、特許を取得しました。
・発明の名称:表皮寄生性単生類の駆除方法
・出願人:一般財団法人 沖縄美ら島財団
・登録日:2026年5月20日
・特許番号:特許第7866821号

※手法の詳細は以下の論文で見ることができます。
“Urea water bath: A novel treatment for monogenean parasite infections in hagfish”(MethodsX, 2025年)
論文URL(フリーアクセス):https://doi.org/10.1016/j.mex.2025.103518(英語)