【深海に咲く一輪の花 水族館編】

前回のROV(無人潜水艇)調査で発見した「ユリ」そっくりの生き物は「オオウミユリ」という棘皮動物の仲間であった。
(深海に咲く一輪の花のリンク)
無事に水族館へ到着した「オオウミユリ」の、その後の展開は?
 
 
飼育員N(以下N)「た、た、た、た、たいへんだ!お、お、お、お、オオウミユリの居場所が変わってる!」

飼育員S(以下S)「ほんとですねぇ、昨日とは正反対の方向に移動しちゃってる。1日で結構歩けるもんですねぇ。」
N「ちょっとSやん、なんでそんなに冷静なのよ。私たち、オオウミユリが歩いて移動するっていう”決定的瞬間”を見逃しちゃったんだよ!」
S「大丈夫ですよ。こんなこともあろうかとビデオカメラを設置しておきましたから。さっき映像を確認したら、しっかり映っていましたよ。」
N「なーんだ、やるじゃないのSやん。ていうか、それならそうと早く言ってよね!で?その映像はどこにあるのよ?」
S「まあまあ、それは後のお楽しみということで。それよりこのオオウミユリ、腕の数がおかしくないですか?」

N「あ、ほんとだ。オオウミユリは棘皮動物の仲間だから、体は五放射相称で腕の数は5本なはずなのに…」
飼育員H(以下H先輩)「うーむ。これはどうやら自切(じせつ)してしまったようだな」
N「あ、H先輩。自切ってどういうことですか?」
H先輩「うむ。N君もトカゲが敵に襲われた時に、自分の尻尾を切り離しておとりにし、逃げ延びるのを見たことがあるよね?オオウミユリも同じように、身に危険を感じた時や強いストレスを受けた場合などに、自分の腕を切り離すことがあるんだ。」
N「強いストレス…。あ!もしかして採集の時の水温変化が原因なんでしょうか?オオウミユリを採集した海底の水温は18℃だったけど、海面付近は24℃もありました!」

H先輩「水温差もそうだが、光の変化や水圧の影響もあるかもしれないな。ただ、実はオオウミユリは再生能力が高い生き物で、たとえ腕を落としてしまっても、うまく飼育できれば新しい腕が再生することもあるんだ。」

H先輩「腕を落としてしまったのは残念だが、ROV調査で明らかになった生息地の情報、すなわち水温や光環境の他に水流の強さなども参考にして、しっかり腕が再生するよう、適切な環境で飼育を行うんだよ」
N,S (二人同時に)「はいっ!!」
 
オオウミユリをうまく飼育できるようにと、決意を固くしたNとS。
ところで何かを忘れていないだろうか?
肝心のオオウミユリが歩く決定的瞬間は、飼育員Sが「海洋博公園公式インスタグラム」にアップしていましたよ。
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