【サンゴの赤ちゃん、海へ】

みなさん、はいさい。
初夏、今年も沖縄美ら海水族館では、様々なサンゴたちの産卵が見られました。大規模な産卵のピークは終了し、産卵時期の恒例となったサンゴ一斉産卵のライブ配信や企画展を終え、ようやく一息つけるようになってきましたので、今年行っている活動の一部をご紹介したいと思います。
今回は、昨年に引き続き行った「サンゴ幼生の放流」活動についてご紹介したいと思います。
サンゴ礁を形成するサンゴは、サンゴ礁生態系に暮らす多様な生き物たちを下支えする重要な生物群です。しかし近年、人の活動が原因と考えられる環境変化によって深刻な影響を受けていると言われています。沖縄県でも、日本最大のサンゴ礁域「石西礁湖」近辺でサンゴの白化の頻度や範囲が大きくなっているなど影響が心配されています。
私達水族館スタッフは、来館する方々に、海洋に広がる水中世界やそこに暮らす多種多様な生き物たちの魅力を、飼育展示を通して伝えられるように工夫していますが、「サンゴ幼生の放流」活動は、自然の海へとその活動の幅を広げたものの一つとなります。これは、飼育しているサンゴを始めとする多くの生き物が、もともと目の前の沖縄の海からやってきていることで可能となる、当館ならではの活動となります。

今年は、6/20に水槽内のウスエダミドリイシから生まれた赤ちゃん(プラヌラ幼生)約36万匹を、専用の網の中で育てた後、水族館前の海域に還しました。赤ちゃんの大きさは1㎜以下。この時期はちょっとした衝撃でも死んでしまうので、採卵から飼育には細心の注意が必要です。

また、放流後は赤ちゃんたちがどれくらい定着しているのか調べていく必要があります。今年は、定期モニタリングや、OISTさんの協力を得て行うDNA調査などを行っていく予定です。今後も研究機関などと協力しながら、持続可能な海洋保全のための知見を少しずつ広げていければと思います。

多くのサンゴ保全事業がそうであるように、広大な海の中では、本事業を行ったからといって十二分にサンゴが増えていくことは望めないかもしれません。しかし、こうした活動を通して、皆さまが沖縄の自然や生物たちに関心を持つきっかけとなってくれればうれしいです。その一歩は、持続可能な海を次世代に引き継ぐために重要なステップとなるはずです。
  • 海洋博公園・沖縄美ら海水族館公式Facebook
  • 沖縄美ら海水族館